黒字倒産とは? なぜ起こる? 回避策をわかりやすく解説|事例あり

「黒字倒産」という言葉をご存じでしょうか。「黒字」と「倒産」は相反するイメージを持つ方も多いでしょう。しかし黒字であるにもかかわらず倒産することは実際にあり、決して珍しいことではありません。

この記事では、黒字倒産の意味と起こる理由、回避するために知っておきたいことを実例を交えて解説します。黒字倒産の兆候を察知し対策するために、是非知っておきましょう。

黒字倒産とは? 言葉の意味と起きる理由

黒字であるにもかかわらず資金繰りの関係で倒産すること

損益計算上で収益が費用を上回り、利益が出ている状態のことを黒字といいます。黒字倒産とは、黒字であるにもかかわらず倒産してしまうことです。手元に現金がなくなり支払ができなくなると倒産に至ります。損益計算書上は利益が出ている状態であっても、資金繰りがうまくいかず現金を確保できなければ、黒字倒産は起きてしまうのです。

なぜ起こるのか? キャッシュフローが大きな鍵

利益が出ているのに現金がないということがなぜ起こるのでしょうか。その鍵は現金の流れ、つまりキャッシュフローが握っています。

会社の取引は、商品の動きと現金の動きにタイムラグのある「掛け」で行われることが一般的です。商品を売上げたとしても、その代金が直ちに入金されるわけではなく、翌月等にまとめて入金されることが多くあります。

この場合は、売上は発生した時点で損益計算書に計上される一方、現金は入りません。入金までに支払があり、その代金を調達できなければ支払不能となり、倒産するという事態が発生するのです。

赤字が倒産に直結するわけではない

黒字なのに倒産する会社がある一方で、赤字なのに倒産しない会社も珍しくありません。この場合も、前述した「掛け」取引によるタイムラグが関係しています。損益計算書上で利益が出ていなくても、手元に支払に充てる現金があれば倒産には至りません。倒産するかどうかは利益の有無ではなく、現金の有無が大きく関わります。

黒字倒産の兆候がないか確認するには? 3つの方法を紹介

方法①キャッシュフロー計算書で現金の流れを確認する

キャッシュフロー計算書とは、現金および現金同等物の流れを表す書類です。決算書のひとつですが、実際の現金の流れをリアルタイムに把握するためにも、随時作成しておくことをおすすめします。仕入代金や経費等の債務を、実際に保有している現金の額に照らし合わせ、手持ちの資金で賄えるかを判断しましょう。

方法②当座比率と自由資金比率を確認する

当座比率は、流動資産の中でも特に現金化しやすい資産である当座資産が、流動負債に対してどれくらいの割合であるかを示す指標です。以下の計算式で算出できます。

当座比率(%)= 当座資産 ÷ 流動負債 × 100

この数値が100%以上であれば支払能力に余裕があり、120%以上であれば安全とされています。

当座比率について詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
>>当座比率とは? 計算式の覚え方や目安までわかりやすく紹介

自由資金比率は、キャッシュフロー計算書の数値を利用して、現金が手元に残りやすい体質かどうかを表す指標です。以下の計算式で算出できます。

自由資金比率(%)= フリーキャッシュフロー ÷ 利益剰余金増加額 × 100

フリーキャッシュフローとは、借入等の財務活動を除く、営業活動をする中で残った現金です。利益剰余金もまた、営業活動の中で得られた利益の額を表します。営業活動で得られた利益のうち、どれだけの現金が手元に残るかを表す指標で、手元の現金の額が適切かどうかや今後の見通し等の判断に役立ちます。

方法③貸借対照表で自己資本比率を確認する

細かい現金の流れだけでなく、長期的な視点で俯瞰してバランスを見ることも必要です。自己資本比率は、調達した資金のうち返済不要な資金の割合を表す指標です。数値が高いほど他人資本の影響を受けにくく、安全な経営を行っていると言えます。以下の計算式で算出できます。

自己資本比率(%)= 純資産 ÷ 総資本 × 100

黒字倒産しないための6つの回避策

回避策①資金繰り表を作成し管理する

資金繰り表とは、入出金のタイミングを把握して資金の動きを管理するものです。作成することで、前述した売上計上と入金のタイムラグを把握し、現金の不足を防ぐことができます。売掛金の回収遅延や回収不能が発生すると資金繰りを見直す必要が出てくるため、実際の入金状況のこまめな反映が大切です。

回避策②回収と支払のタイミングを調整する

売上の回収までの期間を短くできれば早く現金を得られます。支払までの期間を長くできればその間に入金を待つことや資金調達ができます。このような、回収と支払のタイミングの調整は資金繰りを楽にする方法のひとつです。回収までの期間が長すぎないか、支払までの期間が短すぎないかを確認してみましょう。取引先と交渉することで適切なタイミングに変更でき、資金繰りに役立つことがあります。

回避策③売掛金を早く・確実に回収できるよう策を講じる

売掛金は比較的現金化しやすい流動資産のひとつですが、必ずしも回収できるとは限りません。現金と違ってある程度のリスクがあり、取引先が倒産すれば回収できなくなります。

また、いくら売掛金を多く持っていても、現金ではないため支払に充てることはできません。これらのことから、現金での回収を増やして売掛金の割合を下げ、売掛金はできるだけ早く回収できるよう対策することも大切です。

回避策④ 適切に在庫管理する

売上は商品を販売することで発生しますが、その前段階として仕入が必要です。仕入には費用がかかり、販売できなければ費用を回収することはできません。販売より前に仕入費用がかさんで現金が不足するという事態も考えられます。このため、適切に在庫を管理し、資金繰りに支障をきたさない範囲で仕入を行う必要があります。売れ残りのリスクもあるため、過剰な在庫は持たないようにしましょう。

回避策⑤資金調達の体制を整えておく

資金が必要になった場合に備えて、いつでも資金調達ができる体制を整えておくことも対策のひとつです。具体的な方法としては金融機関からの借入が多いでしょう。良好な経営状況を保ち、情報提供によって現状を理解してもらうことで金融機関との信頼を築いておきましょう。また、複数の金融機関と取引を行い、資金調達先の選択肢を多くしておくことも有効です。

回避策⑥資産を現金化する

保有する資産を現金化することで手元の現金を増やすことができます。具体的には、使っていない資産の売却・貸与や手形の割引等の方法があります。一時的な対策ではありますが、すぐに現金化できれば即効性のある方法と言えます。

会社の持つ建物や不動産を担保として借入を行うという方法もあります。ただし、返済できなければ担保にした資産を失うリスクがあるため、慎重な検討が必要です。

黒字倒産の割合は半数近く|キャッシュフローを見直して回避しよう

東京商工リサーチが2020年に行った「倒産企業の財務データ分析」調査では、倒産企業のうち53.2%が直前の当期純利益がマイナス=赤字という結果が出ています。裏を返せば、残りの約半数は直前の当期純利益がプラスにもかかわらず倒産しており、黒字倒産は珍しくないことがわかります。順調に利益を出していても、資金繰りに問題があり倒産するという例は多くあります。自社は関係ないと安易に判断せず、キャッシュフローを改めて見直し、黒字倒産を回避しましょう。

実際に黒字倒産となった事例とその原因

事例①某不動産業者

不動産を取り扱っていたこの会社は、1990年代の設立以来順調に営業展開していた大手企業でした。しかし市場の急速な冷え込みにもかかわらず、それまでと同様のペースで不動産の仕入を行っていきます。最初は銀行からの融資に頼っていましたが、追加の融資を受けられず、最終的に黒字倒産に至りました。

原因は、過剰な仕入による在庫過多です。損益計算書上では、仕入を行った時点では費用とならず、販売されてはじめて費用として計上されます。実際の債務が費用として反映されていないため、損益計算書では実情より利益が多く計上されます。この会社は、この点をカバーするのに十分な営業利益を上げることができておらず、キャッシュフロー上ではマイナスであったのです。損益計算書だけでなく、キャッシュフロー計算書の重要性を改めて認識させられる事例と言えます。

事例②某商社

化学薬品を取り扱っていたこの会社は、中国の急激な経済成長とともに業績を伸ばしていました。しかし中国の経済状況が減退して大口取引先の経営が悪化し、売掛金の回収ができなくなったため、黒字倒産となりました。

原因は、売掛金が回収不能となったことです。損益計算書上は売掛金も収益として計上されますが、実際に手元に現金が入っているわけではありません。この会社のように回収不能となる可能性もあるため、売掛金が大きな割合を占める場合はリスクへの対策を講じ、現金での取引を増やして売掛金自体を減らす努力が必要と言えます。

黒字倒産についてよくある質問Q&A

Q1.黒字倒産しやすい業種はありますか?

特に黒字倒産のリスクが高い業種に、建設業があります。特徴として、まず材料や設備、什器等の仕入が必要である点、自社で対応できない作業の外注費用がかかる点、そして売上の発生は最後である点が挙げられます。

先行投資が必要であり、なおかつ売上の回収は最後になるため、まずは資金調達が必要です。資金を借入れた場合は順調に業績を伸ばして返済していかなければなりません。さらに材料費の高騰や資材不足等の不確実な要素もあり、値下げの交渉を受けることもあるでしょう。このため、建設業で立ち行かなくなる会社の割合は大きくなっています。これらの特殊性を理解した上で、長期的に経営計画を行いましょう。

Q2.上場企業でも黒字倒産のリスクはありますか?

黒字倒産は、上場企業であっても起こりえます。実際に、先に黒字倒産の例として挙げた2社はどちらも当時の東証一部上場企業でした。黒字倒産を防ぐ鍵はキャッシュフローです。現金の流れの把握と適切な管理ができれば、上場企業であっても零細企業であっても黒字倒産を防止できます。損益計算書上の利益だけでなく、キャッシュフローにも目を向けて実情を把握することが大切です。

まとめ

現金が回らなくなることで陥る黒字倒産は、企業の規模を問わず起こります。利益を追求することも大切ですが、キャッシュフローを正確に把握して現金を確保しておく必要性も大きいものです。また、黒字倒産の起こりにくい企業体質を作ることで、経営がしやすくなる面もあるでしょう。

順調に利益を出しているのに倒産してしまうのはとてももったいないことです。自社には関係ないと考えず、現状を知って適切な対策を取ることで黒字倒産を回避しましょう。

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oneplus編集部

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